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東京高等裁判所 平成29年(ネ)1060号 遺言無効確認請求、同反訴請求控訴事件

東京高等裁判所 平成29年(ネ)1060号 遺言無効確認請求、同反訴請求控訴事件

遺言 確認訴訟自筆証書遺言公正証書遺言遺言の撤回

判例No. 1074

東京高等裁判所 平成29年(ネ)1060号 遺言無効確認請求、同反訴請求控訴事件

事件番号東京高等裁判所判決/平成29年(ネ)1060号
判決日付平成29年8月3日
判示事項被相続人は、平成22年10月20日、全財産を控訴人らに相続させる内容の公正証書による遺言(以下「本件公正証書」という。)をした後、平成23年9月8日、これまでの遺言をすべて取り消す旨の自筆証書による遺言(以下「本件自筆証書遺言」という。)を作成した。

被相続人の孫である被控訴人らのうち一名が、被相続人の子である控訴人ら及び自分以外の被控訴人に対し、本件公正証書遺言が本件自筆証書遺言により取り消されて無効であることの確認を求め、反訴として、控訴人らが、被控訴人らに対し、本件自筆証書遺言が無効であることの確認を求めた事案である。被控訴人は、被相続人は身の安全の確保のために本件公正証書遺言を作成したにすぎず、後日これを無効とするために、本件自筆証書遺言を作成したと主張した。一方、控訴人らは、被相続人は被控訴人らに事業を妨げられないようにするために本件公正証書遺言をしたのであり、本件自筆証書遺言については、作成時、被相続人には自書能力が無く、印影も、被相続人の実印ないし認印によるものではないとして、その無効を主張した。

これに対し、本判決は、本件公正証書遺言の成立について当事者間に争いが無いとした上、被控訴人の主張する、被相続人は身の安全の確保のために本件公正証書遺言を作成したにすぎないという主張は、証拠がなく憶測の域を出ないとして、本件公正証書遺言を有効とした。

また、本件自筆証書遺言については、本件自筆証書における被相続人の筆跡は被相続人自身の筆跡と同一であると判断した筆跡鑑定書は、性質上、証明力に限界があり、反対趣旨の鑑定書の存在も考慮すれば、鑑定書のみによって被相続人による自書であると判断するのは相当ではないとし、また、本件自筆証書遺言作成前後に関する控訴人らの供述は信用できないと述べた上、印影が被相続人の実印及び認印の印影と一致しないこと、真正に成立したものと認められない平成21年遺言書と文面及び体裁が似ていること、作成された時期に被相続人と被控訴人の間に株式売却代金返還の争いが生じていたこと等を認定し、本件自筆証書遺言が真正に成立したものと認めることはできないとした。