遺産分割

遺産分割一覧

遺産分割 錯誤遺産分割協議の無効

判例No. 1069

東京地方裁判所 平成26年(ワ)20311号 遺産分割協議不存在確認等請求事件

事件番号 東京地方裁判所判決/平成26年(ワ)20311号
判決日付 平成28年9月8日
判示事項 相続人の一人が他の相続人に対し遺産分割協議の不存在を主張し、予備的に同協議の錯誤無効を主張した事案である。原告は、遺産分割協議の不存在ないし錯誤無効の理由として、
(1)遺産分割協議書の内容の協議が行われたことはないこと、
(2)署名押印が必要な金融機関への提出書面と共に遺産分割協議書を渡され、気が付かないうちに遺産分割協議書に署名押印をしてしまったことを主張した。

これに対し、本判決は、原告の供述は、自ら署名・押印を行ったか否か等の重要な点で変遷しており信用できないと述べた上、原告が他の相続人と同様、遺産分割協議書に自ら署名・押印した事実が認められる以上、遺産分割協議書は真正に成立したものと推定され、これを覆すに足る証拠がないとして、遺産分割協議の成立を認めた。

また、原告が、遺産分割協議書の作成に先立って行われた協議に毎回同席し、その経緯を見ていたこと、協議段階において暫定的な分割案を示した書面を受け取っていたこと等を認定し、原告が遺産分割協議書の内容を理解した上で同協議書に署名押印したことが推認できるとして、原告の錯誤無効の主張も認めなかった。
遺産分割 遺産の範囲公正証書遺言相続させる遺言

判例No. 1032

東京高等裁判所 平成21年(ラ)第985号 遺産分割審判等に対する抗告事件

事件番号 東京高等裁判所決定/平成21年(ラ)第985号
判決日付 平成21年12月18日
判示事項

特定の相続人に不動産を相続させる旨の遺言がある場合、当該相続人は相続開始時に当該不動産の所有権を何らの行為を要しないで確定的に取得したものであるから、当該相続人が遺言の利益を放棄する旨の陳述を行ったとしても、当該相続人が、遺言が無効であることを主張しておらず、その他、相続財産を遺産分割の対象とみるべき特段の事情のない限り、当該財産が被相続人の遺産として遺産分割の対象となる性質のものになるとはいえないと判示した事例。


遺産分割 代償分割

判例No. 1070

大阪高等裁判所 平成28年(ラ)56号 遺産分割審判及び寄与分を定める処分申立却下審判に対する抗告事件

事件番号 大阪高等裁判所決定/平成28年(ラ)第56号
判決日付 平成28年9月27日
判示事項 遺産の中の一部の土地について、相続人の一人に取得させた上で代償金の支払を命じるなどした原審判の一部を変更し、同土地の共有取得を命じた事例。

本決定は、抗告人が全ての土地を取得して代償金を支払う方法による遺産分割では相手方の取得希望が一切叶えられないこと、抗告人の資力からみて代償金不払の危険が大きいこと、当該土地には抗告人が代表者を務める会社の使用する建物が存在すること、抗告人及び相手方の双方が当該土地の換価分割に反対していること等の事情から、相手方が当該土地の共有取得に反対しているとしても、双方の希望と公平な分割を実現するためには、当該土地を共有取得とすることもやむを得ないと判示した。
遺産分割 特別受益寄与分持ち戻し免除

判例No. 1034

東京高等裁判所 平成21年(ラ)第617号 遺産分割審判等に対する抗告事件

事件番号 東京高等裁判所決定/平成21年(ラ)第617号
判決日付 平成22年5月20日
判示事項

寄与相続人であるとともに特別受益相続人でもある相続人がいる場合、同人が持ち戻しを命じられた特別受益の全体額が具体的相続分を超過するとしても、その超過した特別受益部分を審判により認定された寄与分からさらに差し引くことはできないとした事例。


遺産分割 錯誤遺産分割協議の無効

判例No. 1072

東京地方裁判所 平成26年(ワ)2823号 遺産分割協議無効確認等請求事件

事件番号 東京地方裁判所判決/平成26年(ワ)2823号
判決日付 平成28年10月19日
判示事項 A国の戸籍に記載されていた被相続人の相続に関し、相続人の一人が他の相続人に対し、A国民法に基づいて、遺産分割協議の通謀虚偽表示による無効を主張し、予備的に同協議の錯誤による取消(※A国民法に基づく)を主張した事案である。原告は、遺産分割協議の通謀虚偽表示無効の理由として、遺産分割協議に出席した税理士から、葬儀費用・税金等を直ちに支払うためには被相続人名義の預金口座を被告名義の口座に換える必要があると言われたことから、本件協議書の内容の合意をする意思がないにもかかわらず、通謀してそのような意思があるように合意したことを主張し、遺産分割協議の錯誤取消の理由として、(1)税理士の上記説示により、被相続人名義の預金口座を被告名義の口座に換える必要があるとの錯誤に陥ったこと、(2)遺産分割協議書に署名押印する前後に証人Bから「事後報告を完全にしてください」という発言があったため、後日、真実の遺産分割協議があるものと誤信したことを主張した。

これに対し、本判決は、証人Bの供述は、本件協議書に署名・押印がされた場面についての重要な点すら覚えておらず信用できないと述べた上、原告の供述等のみでは原告らの主張する事実を認定することはできないとした。また、仮に税理士から上記原告の主張するような発言がされたとしても、遺産分割協議書には、遺産分割方法が記載されており、原告らはそれに署名押印していること、原告は社会経験のある成人であること、相続人らが一同に会する場で、弁護士立会いの下、印鑑証明書を持参し、実印で押印していること等を認定し、原告が本件協議書の内容を理解せずに署名押印したとは認められないとして、原告の虚偽表示無効の主張を認めなかった。

また、錯誤取消については、上記の理由に加え、遺産分割協議の対象に不動産が含まれていることから、原告が、法要等の支払いのために分割協議をしなければならないと誤信することはないこと、遺産分割協議の前に読み上げられた被相続人の遺嘱には、被告に財産処分を任せるとの意向が記載されており、原告はその内容に同意していたと認められること等から、原告は錯誤に陥っておらず、仮に錯誤があったとしても過失があるとして、原告の錯誤取消の主張も認めなかった。